鈴生すずな)” の例文
その眼は情熱に輝きみちみち、その唇は何とも形容の出来ないうらみに固くとざされて、その撫で上げた前髪のぎわには汗の玉が鈴生すずなりに並んで光っていた。
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
べつにつるうめもどきの赤い実の鈴生すずなりになったのをしていると、母親は「私、この梅もどきッていう花大好きさ、この花を見るとお正月が来たような気がする」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
鈴生すずなりにむらがって、波頭のせり上るように、噴水のたぎるように、おどっているところは、一個大湊合だいそうごうの自然の花束とも見られよう、その花盛りの中に、どうかすると
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
電車も学校の前の線は車台を増して運転しますが、みんな鈴生すずなりです。前途有望の鳥打ち帽が潮のように押し寄せて来るところは壮観ですよ。校内立錐の余地もありません。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
初夏しょかのころには、あおい、ちいさな鈴生すずなりになりました。そして、そのがだんだんおおきくなりかけた時分じぶんに、一むしがついて、畑全体はたぜんたいにりんごのちてしまいました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その上のコリント式のアーチのてっぺんまで鈴生すずなりになった観衆はおよそ一万七千人。
梵妻も、西日にてらてら光っている柿の実の鈴生すずなりに生っている梢を見上た。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
一気に筥崎駅へ駈け込んだ列車の窓からは、旅客の顔が鈴生すずなりに突き出ていて、そこから飛び降りた二三人の制服制帽が、線路づたいに走って来るのが見える。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)