金釵きんさい)” の例文
すると、後堂こうどうのほの暗い片隅に、一夫人がその娘らしい者を抱いてすくんでいた。紅の光が眼をかすめた。珠や金釵きんさいが泣きふるえているのである。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とき恥辱はぢ恐怖おそれとによわきもののこゑをも得立えたてず、いたみ、かなしみ、けるかたちよそほはざるに愁眉しうび泣粧きふしやう柳腰りうえうむちくじけては折要歩せつえうほくるしみ、金釵きんさいしては墮馬髻だばきつ顯實けんじつす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
枕山の妻が金釵きんさいを典売して夫君とその友とのために酒を
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また、えり元から胸の守りというものを掛けて、それをふところに抱いていた。他には、金釵きんさい銀簪ぎんしんのかざりもないし、濃い臙脂えんじ粉黛ふんたいもこらしていなかった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一雲去れば一風生じ、征野に賊をはらい去れば、宮中の瑠璃殿裡るりでんり冠帯かんたい魔魅まみ金釵きんさいの百鬼は跳梁して、内外いよいよ多事の折から、一夜の黒風に霊帝は崩ぜられてしまった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
常磐は、髪にさしていた一本の金釵きんさいを抜いて、兄弟の手へわたした。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)