野呂間のろま)” の例文
その後私は佛蘭西の農民も見たが、彼等の最も優れたものでさへも、モオトンの娘達に較べると、無智で下品げひん野呂間のろまだと思はれた。
これしきの事をもし驚ろく者があったなら、それは人間と云う足の二本足りない野呂間のろまきまっている。人間は昔から野呂間である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かの女はむす子が巴里パリの街中でも、かの女を引っ抱えるようにして交通を危がり、野呂間のろま野呂間のろましかりながら、かの女の背中をでさするのをおもった。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
勝手に腰かけていて取りにくれば黙々として金を出すほうも、いかにもいぎりす人らしく、莫迦々々ばかばかしく野呂間のろまで、神経のふといところがうかがわれる。
わたしは十二の歳から村の入口の咸享酒店かんこうしゅてんの小僧になった。番頭さんの被仰おっしゃるには、こいつは、見掛けが野呂間のろまだから上客のそばへは出せない。店先の仕事をさせよう。
孔乙己 (新字新仮名) / 魯迅(著)
なかなかよく練れていそうである。それと比較くらべるとこちらの二人はどんなものかな。これも非常に気が合って、それで二人とも駄々っ子で、何か野呂間のろまのようでもある。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
姉も同じく、配給所の前に立並ぶ女達の中には少くとも五六人は似た顏立を見るやうな奧さんである。ヒステリツクでもなく、と云つて、さほど野呂間のろまにも見えず華美はで好きでも吝嗇でもない。
或夜 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
野呂間のろまな姿までが、にわかによく見えてきて、半蔵は、自慢らしく云った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤原の不実はこれ/\おふくろの心の悪い事はこれ/\で、一体喜代之助が屋敷を逐出おいだされたのはわたくし故ではなく、全体了簡がけちんぼで、意地が悪くって、野呂間のろまだからとかなんとかこと/″\く書いてあるから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「そこが職業しょうばいだもの。掴まってばかりいたら、職業にならないじゃないの。小父おじさんなんかも(掴まらなけりゃあ、やるがなあ……)って言っているんだけど、小父さんのような野呂間のろまなんかにはとても出来やしないんだよ。」
街底の熔鉱炉 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
野呂間のろまじゃ天下の助けはできない
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
案外に野呂間のろまで、今日を今日として悠々と楽しむ心も一面には持っていそうにも思われる。だが、あの子供らしい「ジャメジャメ」にも何かしらの暗い哀調は籠っていた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
姉も同じく、配給所の前に立並ぶ女達の中には少くとも五、六人は似た顔立を見るような奥さんである。ヒステリックでもなく、と云って、さほど野呂間のろまにも見えず華美はで好きでも吝嗇りんしょくでもない。
或夜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)