たけな)” の例文
こうして、三傑が額をあつめて密談いよよたけなわにして、いつ果つべしとも見えない時分、次の間から、恐る恐る三太夫の声として
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
春がたけなわになりかけて、気候はよく、木木は芽を吹き、花は蕾を破って、どこを見ても美しく、ハーグも、ライデンも、ユトレヒトも皆美しかったが
レンブラントの国 (新字新仮名) / 野上豊一郎(著)
夢殿や美豆良みづら結ふ子も行きめぐりをさなかりけむ春はたけな
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
戌刻半いつつはん(九時)過ぎになると、興はまさにたけなわでした。
談論が縦横にたけなわなるに任せて行く途中、ここで、抜からぬ面で差出口をされたものですから、驚くのも無理はありません。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
戌刻半いつつはん(九時)過ぎになると、興はまさにたけなはでした。
お角親方一座の興が、全くたけなわなる時分に、湖水の一方から、矢のようにこの岸へ漕ぎ寄せて来た二はいの舟がありました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お雪ちゃんに説明して話の興がようやくたけなわになるところへ、そろりそろりと音がして、その場へぬっと道庵先生が寝ぼけまなこで現われて来ました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大尽の家では、琴や三味線や胡弓で、ゆるやかな合奏の興がたけなわになる時分に、道庵の櫓では、天地も崩れよと馬鹿囃子がはじまってしまいました。
この新客が席につくと、今まで会話にたけなわであった士分と、商人と、それから洋人男女と、その他の者が一時みな、お絹の洋装の方に目をつけました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
にも拘らず、米友が手練の入興はようやくたけなわになりまさって行って——ようやく忘我の妙境に深入りして行く。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
興がようやくたけなわになろうとする時に、隣家の道庵先生の屋敷の屋根上がにわかに物騒がしくなりました。
これより先、今宵のこの二人の水入らずの会話と討論会がたけなわなる時分から、このやかたの例の松の大木の根方にたたずんで、ひそかにそれを立聞きしていた者がありました。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかもその座敷には新たに二人の客があって都合四人、酒興ようやくたけなわなるの時でありました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その衝突のたけなわなる時も、われわれは何の異状なく、今、現に大衝突をしつつあるのだという自覚にも、現象にも、触るることなしに、無事安穏に通過してしまいました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
最初は、いつも茂太郎の口笛から音頭が始まるのだが、こうたけなわになってしまうと、茂太郎は頃を見計らって、口笛をやめて、足踏みだけをして、群集をながめているのです。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それから、長州の人傑の近況が一くさりうわさに上ったことでしょう。やがて順序を得て、今日の来訪の理由の眼目に進んで密談がたけなわになるほど、外間の窺知きちを許さないものがある。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
二人の談論たけなわにしてむことを知らないこの場へ、さしもの広長舌のおしゃべり坊主が一枚加わったのでは、その舌端をほとばし滝津瀬たきつせの奔流が、律呂の相場を狂わすに相違あるまいと
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すべて、事は盛満をむもので、今宵の風流は、最初から興がたけなわに過ぎました。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かくて山科の広野原——へ来たが、まだ月光たけなわなる深夜なのです。その広野原へ来て——山科には特に広野原というべきところはないけれども、彼のさまよう世界のいずこも広野原。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
たけなわにして踊り手に逃げられた船の客は呆気あっけに取られ、囃子連も張合いが抜けたが、しかし船中の陽気は衰えたというではなく、人々はみんないい心持で酔わされたような気分です。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
無論、駒井甚三郎も研究室のカーテンを掲げて、最初からこの形勢を見ていましたが、今し、仲間喧嘩がたけなわになったのを見て、カーテンを下ろしてしまい、またキャンドルを消してしまいました。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
つんぼであった金椎キンツイの耳には、ただでさえ、僅かの案内では耳にうつろうはずもないのを、この時は、前にいう通り、仮睡から熟睡へ落ちたたけなわの時分でしたから、最初のおとないも、あとの闖入も
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
芸尽しがいよいよたけなわになる、なかには名古屋甚句じんくも聞える——
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
談論たけなわなる両浪人は、この差出口にいたく驚かされました。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
吹いてたけなわなるに至れば至るほどわからない。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)