遠目金とおめがね)” の例文
(あの松原の砂路すなじから、小松橋こまつばしを渡ると、急にむこうが遠目金とおめがねめたようにまるい海になって富士ふじの山が見えますね、)
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
七十五里を一目に見る遠目金とおめがね芥子粒けしつぶを卵のごとくに見る近目金、猛虎の皮五十枚、五町四方見当なき鉄砲、伽羅きゃらきん、八畳釣りの蚊帳かや、四十二粒の紫金しこんいたコンタツ。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
崖縁がけぶちの台つきの遠目金とおめがねの六尺ばかりなのに妹が立掛たちかかった処は、誰も言うた事ですが、広重ひろしげの絵をそのままの風情でしたが——婆の言う事で、変な気になりました。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
藩侯の宝物蔵にあったという、由緒づきのおおき遠目金とおめがねを台つきで廻転させるのであるから、いたずらものを威嚇いかくするのは十分だが、あわただしく映るものは——天女が——縞蛇に——化鳥けちょうに——
無事に山へ行きました。——が、遠目金とおめがねを覗くのも、一人が腰を掛けたのも、——台所へ引込ひっこんでまでもよく分る。それとともに、犬婆さんが、由紀の身について饒舌しゃべるのさえ聞えるようで。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
でその——小松橋を渡ると、急に遠目金とおめがねのぞくようなまるい海の硝子がらすへ——ぱっと一杯にうつって、とき色の服の姿がなみの青いのと、いただきの白い中へ、薄いにじがかかったように、美しくなびいて来たのがある。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)