達摩だるま)” の例文
達摩だるま大師は、「無心論」を書いたといわれる。この無心と平常心とは、同じ心を別の言葉で示したものと見てよい。平常はつまり「無住心」なのである。
改めて民藝について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
小さい者の玩具としては、犬張子、木兎みみずく達摩だるま、鳩のたぐい、一々数え切れません、いずれも張子でした。
我楽多玩具 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かくて三年みとせばかり浮世を驀直まっすぐに渡りゆかれければ、勤むるに追付く悪魔は無き道理、殊さら幼少よりそなわっての稟賦うまれつき、雪をまろめて達摩だるまつくり大根をりてうそどりの形を写しゝにさえ、しばしば人を驚かせしに
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
達摩だるま蒐集家しゅうしゅうかとして奇名隠れなかった理学士西芳菲山人の名が見える。
……達摩だるまは面壁九年にして、少林の熊耳ゆうじと云われました。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
風邪を引く心配さえなければ、私も雪達摩だるまも作りたい。
店さきに張子の大きい達摩だるまを置いて、その片眼を白くしてあるのは、なにか願掛けでもしたのかと訊いたが、主人も職人も笑って答えなかった。楽隊の声が遠くきこえる。
秋の修善寺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
甚大じんだいな意味があろう。分別に止まっている間は、これに向い何の答えをも送ることが出来ぬ。それのみではなく、「達摩だるま未だ西来せざる時如何」とか「蓮華れんげ未だ水を出でざる時如何」とか尋ねる。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
しかし時代の変遷で、その我楽多もだんだんに減って来るので困ります。大師だいし達摩だるま雑司ぞうしすすき木兎みみずく亀戸かめいど浮人形うきにんぎょう、柴又のくくざるのたぐい、みんな私の見逃されないものです。
我楽多玩具 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)