通口かよいぐち)” の例文
納戸へ通口かよいぐちらしい、浅間あさまな柱に、肌襦袢はだじゅばんばかりを着た、胡麻塩頭ごましおあたまの亭主が、売溜うりだめの銭箱のふたおさえざまに、仰向けにもたれて、あんぐりと口を開けた。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
通されたのが小座敷こざしきで、前刻さっき言ったその四畳半。廊下を横へ通口かよいぐちがちょっと隠れて、気の着かぬ処に一室ひとまある……
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
書棚をのぞいて奥を見て、抽出ぬきだす論語の第一巻——やしきは、置場所のある所とさへ言へば、廊下の通口かよいぐちも二階の上下うえしたも、ぎつしりと東西の書もつのそろつた、硝子戸がらすど突当つきあたつて其から曲る
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
表二階の縁と、広く続いて、両方に通口かよいぐちのあるのが、何だか宵から、暗くてさびしゅうございました。——いま、その裏階子の口の狭い処にぼッと人影がして色の白いおんなが立ちました。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)