途切とぎれ)” の例文
また途切とぎれがちな爪弾つまびき小唄こうたは見えざる河心かわなか水底みなそこ深くざぶりと打込む夜網の音にさえぎられると、厳重な御蔵おくらの構内に響き渡る夜廻りの拍子木が夏とはいいながらも早や初更しょこうに近い露の冷さに
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
途切とぎれ途切れに残っている彼女の面影おもかげをいくら丹念に拾い集めても、母の全体はとても髣髴ほうふつする訳に行かない。その途切とぎれ途切に残っている昔さえ、なかば以上はもう薄れ過ぎて、しっかりとはつかめない。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しか容易ようい彼等かれらこゝろ落居おちゐない。しばらはなし途切とぎれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)