軸物じくもの)” の例文
次郎左衛門のうしろの床の間には、細い軸物じくものの下に水仙の一輪挿しが据えてあった。二人は女房や女中の酌で酒を飲んでいた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こういう調子でこのごろ矢野の下宿生活はさびしいものではない。大木から軸物じくものなど借りてきて、秋草の花をびんにさし、静かにひとりを楽しむ事もあった。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そして、いつもその中から、刀剣類や、軸物じくものや、小箱などを、いくつかずつ取出して風呂敷に包んだ。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「此間、彼奴あいつが持って来た軸物じくものを、何だと思う、あれが、わしおとしいれる罠だったのだ。あれは一体誰のものだと思う。友達のものだと云う、その友達は誰だったと思う。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
古筆こひつ軸物じくものとか、三島の香盒こうごうとかは、いずれ屑屋くずやか何かで捜してお返しいたします。ヘエ——
蔵書を始め一切の物を売却しようと云うことになって、ず手近な物から売れるだけ売ろうと云うので、軸物じくもののような物から売り始めて、目ぼしい物を申せば頼山陽らいさんよう半切はんせつ掛物かけものきんに売り
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
とこにかけてある軸物じくものっくり返っていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
およ何時いつ取りに来る?」といた。やっぱり、軸物じくもののことが少しは気になっているのだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そう云いながら、その男は立ち上って、応接室の入口に、立てかけてあった風呂敷包ふろしきづつみを、テーブルの上に持って来た。その長方形な恰好かっこうから推して、中が軸物じくものであることが分っていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)