せば)” の例文
川幅がひろかったが、谷が次第にせばまって、水嵩みずかさが多くなったので、左の岸の森へ入った、山桜がたった一本、交って、小さい花が白く咲いているのが、先刻の白花の石楠花とふたつ
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
よる對岸たいがん松林まつばやし陰翳かげみづげて、川幅かわはゞわづか半分はんぶんせばめられてえる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
われははからずも眉をせばめて、我に許嫁の妻なし、未來にも亦さる人なからんと叫びぬ。マリアの面には失望の色をあらはせり。そはこのおくりものを取次ぎて我を悦ばしめんことをせしが故なり。
このせばまった隅の所では
それも段々せばまって、乾き切った石の谷も、水がちょろちょろ走りはじめたので、もう雪が近いとおもわれた、梓川は寸線にちぢまり、焼岳は焼けただれた顔面を、半分見せたきりであるが
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
私は運命のせばまりしと共に、胸狹くなりしを自ら覺え居候。さて見苦しき假住ひに御尋下され候時、我目を覆ひし面紗ヱエルの忽ち落つるが如く、君の初より眞心もて我を愛し給ひしことを悟り候ひぬ。
崖がせばまったところは、嘉門次と人夫とで、たおれた木を梯子はしご代りに崖にさしかけ、うるさい小枝をなたで切っ払って、その瘤を足溜あしだまりに、一人ずつ登る、重い荷をしょった人夫の番になると
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)