踏台ふみだい)” の例文
旧字:踏臺
もともと初めから徳永商店に長くこびり着いてる心持はなく、徳永を踏台ふみだいにして他の仕事を見付けるつもりでいたのだから
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
納屋の奥から苦労して、踏台ふみだいと縄を一本持ち出して来たんです。何をするのかと思っていると、入口の所に踏台をおいて、それに登ろうというのです。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「念のためだ、お勝手から踏台ふみだいを持って来て、欄間をよく調べてみてくれ。そこはたいていほこりの多いところだ、子供でも猿公でも、這い出せばあとが残るはずだ」
しかし小皿を天井へ持って行くには一々踏台ふみだいを持運ばなければなりませんから私の家では蠅取桶はいとりおけこしらえてあります。お登和とわや、その蠅取桶をここへ持って来て御覧。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
白木のもので二段になっている脚立きゃたつ、即ち踏台ふみだいがありますが、組立て方が美しくかつ軽くて使いよくどの家庭でも悦ばれるでありましょう。他では見かけない品であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そして、そこらの物を踏台ふみだいにして、壁のはりに吊ってある一腰のボロ脇差を取り下ろした。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
他人を踏台ふみだいとしたり甚だしきは友人までも売って位地をめんとしたら、これまた勝利にあらずして敗北はいぼくなりと心得こころえ、よし名を挙げるにしても、卑劣ひれついやしき方法によりて得たならば
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
処が今日けふの新聞を見ると生活に窮した廃兵たちは、「隊長殿にだまされた閣下連の踏台ふみだい」とか、「後顧するなと大うそつかれ」とか、種種のポスタアをぶら下げながら、東京街頭を歩いたさうである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
朝日の通信員として露西亜へ上途した時は半世の夙志しゅくしが初めて達せられる心地がして意気満盛、恐らくその心事に立入って見たら新聞通信員を踏台ふみだいとして私設大使を任ずる心持であったろう。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「なるほどそいつは少し変だな。踏台ふみだいでもなかったのか」