とう)” の例文
いわゆる扶桑ふそう伝説はすなわちこれで、多分は太陽の海を離るる光景の美しさとうとさから、導かれたもののごとく私たちは推測している。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ただこの色をあじわえば世界を味わったものである。世界の色は自己の成功につれてあざやかに眼にうつる。鮮やかなる事錦をあざむくに至って生きて甲斐かいある命はとうとい。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いわゆる相嘗のとうとい役に奉仕する神主たちも、元は必ずその田を管理した戸主へぬし郷長ごうちょうまたは人このかみと呼ばれるような、一定の農民の中から出ていたものと思う。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
『万葉集』にもある足柄山あしがらやまのトブサなどと多分一つの語であり、種俵たねだわらの前後に取りつける桟俵さんだわらも同様に、本来は物のとうとさを標示する一種の徽章きしょうであったかと思われる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)