諸所ところどころ)” の例文
頭はおおかた禿げているが諸所ところどころ白髪しらががある。河原に残った枯れすすきと形容したいような白髪である。黄色い色のしなびた顔。蛇のようにうねっている無数の皺。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
道は少しも険阻ではないが、ただ連日の大雨たいうのため諸所ところどころ山崩れがあって、時々頭上の断崖からは、土石がバラバラと一行の前後に落ちてくるには閉口閉口。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
時々思い出したように、オイチニ、オイチニなどと付景気つけげいきをして進んで行くと、この山中諸所ところどころの孤村では、今宵の月景色を背景に、三々五々男女相集あいあつまって盛んに盆踊りをやっているが
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
和蘭陀オテンダ風に装飾よそおわれている。壁に懸けられたは壁掛けである。昆虫の刺繍が施されてある。諸所ところどころに額がある。昆虫の絵が描かれている。天井にも模様が描かれてある。その模様も昆虫である。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
町付まちつき村から、山道はようやく深くなり、初めは諸所ところどころに風流な水車小屋なども見えたが、八溝川やみぞがわの草茂き岸に沿うてさかのぼり、急流に懸けたる独木まるき橋を渡ること五、六回、だんだん山深く入込いりこめば
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
それは、諸法具足を象徴あらわした曼陀羅の模様であった。血で描かれた曼陀羅紙帳は、諸所ところどころ切り裂かれ、いまだに血をしたたらせ、ノロノロとしたたる血の筋で、尚、如来の姿や伽藍の形を描いていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
塚の頂きに立っているいしぶみには、南無妙法蓮華経と、ひげ題目が刻まれていた。碑は、歳月と風雨とに損われて、諸所ところどころ欠けている高さ六尺ぐらいの物で、色はくろかったが、陽に照らされ、薄光って見えた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)