)” の例文
旧字:
「そうです……わたしの指がわると何もかもお金になるのです。お金にならないものは皆、血になるのです。ヘヘヘ……」
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わしは別にねたみ心からそう言ったのではない。あの様な小僧を相手にするでもないが、態度が憎々しく非礼だったのが気にわったというまでだ。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
そのずっと左の隅に立って手を上に延ばすと、玄関の扉と同じ面にある壁の装飾浮彫の紅葉見物の屋形船にわる。
千早館の迷路 (新字新仮名) / 海野十三(著)
どうしてあのうつとりするやうなきれいな活きものを造つたのだらう! 彼が其の魔法の杖ではれば、みぢめな毛虫も、腐つた木の中の蠕虫うじむしも不思議に立派に仕上げられるのだ。
源吉は、思い切ったように、手すりにもたれて、下に飛下りた。道床どうしょうの砂利が、ざらざらと崩れ、危うく転びそうになって枕木にべたりとわると、ひやっとした冷たいものを感じた。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
御気ごきわったら御勘弁。一ツ差上げましょう」とさかずきを奉まつる。「草葉の蔭で父上が……」とそれからさわりで行くところだが、あの時はどうしてあの時分はあんなに野暮天やぼてんだったろう。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)