“角力取（すもうとり）”の例文

一　角力取（すもうとり）老後を養ふに年寄の株あり。もし四本柱に坐する事を得ばこれ終（おわり）を全くするもの。一身の幸福これより大なるはなけん。

一夕 (新字旧仮名) ／永井荷風(著)

これは田舎の爺さんにちょん髷（まげ）を望むのと少しは違うと思う、強いて言えば、角力取（すもうとり）の髷をそのままに保存したいと思う位かも知れず。

僧堂教育論 (新字新仮名) ／鈴木大拙(著)

一体角力取（すもうとり）の愛敬というものは大きい形（なり）で怖（こわ）らしい姿で太い声の中に、何（なん）となく一寸（ちょっと）愛敬のあるものでのさり／＼と歩いて参りまして

真景累ヶ淵 (新字新仮名) ／三遊亭円朝(著)

そうかと言って膝の上へ両手を置いてるのも角力取（すもうとり）のようで可笑（おか）しいから、乃公はズボンの衣嚢に突込んだ。何かある。

いたずら小僧日記 (新字新仮名) ／佐々木邦(著)

「角力取（すもうとり）らしい男が人を斬って、あの空屋へ逃込んでいるが捕える手段（てだて）が無くて困っている」

鍵屋の辻 (新字新仮名) ／直木三十五(著)

六尺豊かな、まるで角力取（すもうとり）のような専務車掌は、湯気（ゆげ）のたつような怒り方だった。

キド効果 (新字新仮名) ／海野十三(著)

それから失恋のムシャクシャ晴しに、駈付けて来た二三人の人相の悪い奴を向うに廻わして、下駄を振上げているところへ、通りかかった角力取（すもうとり）の木乃伊（ミイラ）みたいな大きな親爺（おやじ）が仲に這入（はい）って止めた。

超人鬚野博士 (新字新仮名) ／夢野久作(著)

神田の兄哥（あにい）、深川の親方が本郷へ来て旅籠を取る数（すう）ではないから、家業はそれっきりである上に、俳優狂（やくしゃぐるい）を始めて茶屋小屋入（ばいり）をする、角力取（すもうとり）、芸人を引張込（ひっぱりこ）んで雲井を吹かす、酒を飲む、骨牌（かるた）を弄（もてあそ）ぶ

黒百合 (新字新仮名) ／泉鏡花(著)

御霊の善哉屋（ぜんざいや）の餅搗（もちつき）か何かして居る角力取（すもうとり）が仲裁に這入（はいっ）て来て

福翁自伝：02 福翁自伝 (新字新仮名) ／福沢諭吉(著)

えゝ彼（かれ）は此の一角を予（かね）て敵（かたき）と附狙（つけねら）うことは風説にも聞いていたが、全く左様と見える、うっかり明けて、角力取（すもうとり）などを連れてずか／＼這入られては困るから能く気を附けろ、えゝ全く一人か

真景累ヶ淵 (新字新仮名) ／三遊亭円朝(著)

花車重吉という角力取（すもうとり）でござります。

真景累ヶ淵 (新字新仮名) ／三遊亭円朝(著)