西伯利亜シベリア)” の例文
旧字:西伯利亞
岸本が神戸を去る時船まで見送って来た番町の友人がその葉書を西伯利亜シベリア経由にして、東京の方から出して置いてくれたからで。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三十歳をすぎている小使は、過去に暗い経歴を持っている、そのために内地にはいられなくて、前科者の集る西伯利亜シベリアへやって来たような男だった。
(新字新仮名) / 黒島伝治(著)
西伯利亜シベリア鉄道を利用することも、米国まわりにすることも、私の健康が許されそうもなかったので、矢張り四十日を費して欧州航路を逆にとることにしました。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
手錠といふと、数年前西伯利亜シベリアの監獄にゐる或る囚徒が本国の文豪ゴリキイに手錠を一つ送つてよこした。自分が牢屋でこさへた記念品だから、遠慮なく納めて呉れと言つた。
お互に西伯利亜シベリア鉄道で欧洲に行くものは何時いつの間にこの小山脈を越えたか気づかぬ位である。
東西相触れて (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
この一〇〇一の試問と難関をぱすした英雄にのみ西伯利亜シベリア経由の特権が附与されるのだ。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
手荷物は高い高い上の金網の上に皆載せられてあつた。浦潮斯徳ウラジホストツク勧工場くわんこうばで買つて来た桃色の箱にはひつた百本いりの巻煙草たばこと、西伯利亜シベリアの木で造られた煙草入たばこいれとが机の上に置いてある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
蕃殖の地は西伯利亜シベリア北部の寒いところで、冬になると樺太、千島、北海道、本州、九州、台湾の方まで渡ってくる。支那の空へも飛んで行く。夏羽は頭が珈琲褐色で、眼のまわりには白い輪がある。
みやこ鳥 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
尤も二三日前から、西伯利亜シベリアのトボリスクに幽閉されて居た廃帝の皇女のタチアナ姫が、トボリスクを脱出して、米国へ渡る為に、日本へ向うと云う電報が、ハルピンや長春から二三通来て居ました。
たちあな姫 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼は東京にある二三の友人へもいそがしく手紙をしたためたが、西伯利亜シベリア経由とした故国からの郵便物は既にもう途絶していることをも知った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それが、丁度、地下から突き出て来るように、一昨日よりは昨日、昨日よりは今日の方がより高くもれ上って来た。彼は、やはり西伯利亜シベリアだと思った。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
西伯利亜シベリアの景色お気に入りしと思ふ」と云ふ大連たいれん平野万里ひらのまりさんから寄越よこしたものであつた。伊藤公の狙撃されたと云ふ場処ばしよに立つて、その眼前がんぜんに見た話を軍司ぐんじ氏の語るのを聞いた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
トボリスクで過激派の厳重な監視の下に居る皇女が、無事に脱出して、長い西伯利亜シベリア鉄道の各駅を、見咎められる事なくして、通過したと云う事は、有り得べからざる不可能事のように思われました。
たちあな姫 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
何時でも西伯利亜シベリア経由とした郵便物の来るのは朝の配達ときまっていた。その時彼は新聞や雑誌や手紙の集まったのをドカリと一時に受取った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それを一人も残らず殲滅してしまった。我軍の戦術もよかったし、将卒も勇敢に奮闘した。これで西伯利亜シベリアのパルチザンの種も尽きるでありましょう。と、ね。」
パルチザン・ウォルコフ (新字新仮名) / 黒島伝治(著)