裾濃すそご)” の例文
車の中の人は見えないが、べに裾濃すそごに染めた、すずしの下簾したすだれが、町すじの荒涼としているだけに、ひときわ目に立ってなまめかしい。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
赤地あかぢ蜀紅しよくこうなんど錦襴きんらん直垂ひたゝれうへへ、草摺くさずりいて、さつく/\とよろふがごと繰擴くりひろがつて、ひとおもかげ立昇たちのぼる、遠近をちこち夕煙ゆふけむりは、むらさきめて裾濃すそごなびく。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
信玄の嫡子、太郎義信は時に二十四歳、武田菱の金具竜頭りゅうずの兜を冠り、紫裾濃すそごの鎧を着、青毛の駿馬に跨って旗本をたすけて、奮戦したことは有名である。
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
空いろの裾濃すそごの不二の立てらくは夜のほのぼののものにぞありける
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)