血色けっしょく)” の例文
学士が来て見ると、病人がこのごろになく好い血色けっしょくをしていた。それを見て学士が云った。「この塩梅あんばいだと、もう二三日立ってから起きられそうだね。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
林檎りんごのように血色けっしょくのいい看護婦が叫んだ。彼女のっている前には、一つの空ッぽの寝台ベッドがあった。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
血色けっしょくの鮮かな、眼にもまゆにも活々いきいきした力のあふれている、年よりは小柄こがら初子はつこは、俊助しゅんすけの姿を見るが早いか、遠くからえくぼを寄せて、気軽くちょいと腰をかがめた。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
(初めて気の付きたる如く顔を見る。)今日は大変に血色けっしょくが悪いよ。ゆうべなかったのかい。
にわかに戸があいて、赤い毛布もうふでこさえたシャツをわか血色けっしょくのいい男がはいって来ました。
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
其翌年の春、彼女は同郷どうきょうの者で姓も同じく商売も兄のと似寄によった男に縁づいたことを知らして来た。秋十月の末、ある日丸髷まるまげった血色けっしょくの好い若いおかみさんが尋ねて来た。とめやであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ただ血色けっしょくのいい丸顔や、分別くさくはげかかった後頭部などを見ると、たいへん元気にみえ、なんだか、その首を連隊長か旅団長ぐらいの軍服のうえにすげかえても
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
学士は、たくの側にいるマリイに向いて云った。「あなたもも少し血色けっしょくくっても好いね。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
血色けっしょくのいい手がそのコップをにぎっている。誰だろうかと検事がその声の主をあおいでみるとそれは針目博士はりめはくしだった。そしてそのまわりに、検事の部下たちの頭がいくつもかさなりあっていた。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ヘーイ少佐が、血色けっしょくのいい顔をぬっと店の中へ入れた。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)