虚心きょしん)” の例文
虚心きょしん流無二のつかい手であるように、右近は、芸州浪人と名乗っているだけに、かの二見ふたみうらの片ほとりに発達しきたった、天馬てんまくうをゆく独特の速剣そくけん観化流かんげりゅう大統たいとうをつたうる
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
むしろ彼自体は、自己の生命にたいして、そうなだめている姿だった。——そして、ここの高窓から一道のうすい外光が射す日には、膝やたもとをあるいているしらみをながめて虚心きょしんに暮した。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぼくはサイクロレエンから降りたった後、なにもかもが飛び去ったあとのような心地よさで独り、岸にたち、潮風に、髪の毛をなぶらせながら、青黒くひかる海を、虚心きょしんに、ながめていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
これまでは虚心きょしん平気へいきで、健全けんぜんろんじていたが、一ちょう生活せいかつ逆流ぎゃくりゅうるるや、ただちくじけて落胆らくたんしずんでしまった……意気地いくじい……人間にんげん意気地いくじいものです、貴方あなたとてもやはりそうでしょう
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
座談の上手な人だから、虚心きょしんに聴いていても面白い。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
藤吉郎は、小六の虚心きょしんになった隙を外さず
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)