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蘭麝
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らんじや
たきもしめざる
蘭麝おのづから
薫りて、
其の
行くや
蛺蝶相飛べり。
蒲柳纖弱、
羅綺にだも
勝へ
難し。
麗娟常に
身の
何處にも
瓔珞を
挂くるを
好まず。
蘭麝の薫を漂はせた
綺羅の袂を
弄びながら、
嫋々としたさまで、さも恨めしげに歎いたは
蘭麝に
馨る石の
唐櫃……
蘭麝馨れる
閨の
戸に
「おまけにお
前、
小屋一杯、
蘭麝の
香が
芬とする。
其の
美しい
事と
云つたら、
不啻毛嬙飛燕。」