薬礼やくれい)” の例文
旧字:藥禮
さて掙人かせぎにんが没してから家計は一方ならぬ困難、薬礼やくれいと葬式の雑用ぞうようとにおおくもない貯叢たくわえをゲッソリ遣い減らして、今は残り少なになる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
暮の事なので医者の薬礼やくれいその他がこの内に這入っているのだそうだ。妻に調べさせるとこっちの方は元の通りだと云う。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それを持っていって薬礼やくれいを貰っておけ」と得石は云った、「今日の薬礼は『乙』のほうだ」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「先生、お薬礼やくれいはいくら差上げたらよろしゅうございましょう」と聞くと、「あ、十八文置いて行きな」と答える、それで十八文の先生、一名、安いお医者さんで有名なのであります。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いえいけませぬ、いけませぬ、ハツ/\医者いしやかゝるのもうがすが、すぐ薬礼やくれいを取られるのが残念ですから。金「医者いしやかゝれば是非ぜひ薬礼やくれいを取られますよしかそれいやなら買薬かひぐすりでもしなすつたら。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「怪しからぬことを言わっしゃい、わしの屋敷は旅籠はたごではござらぬぞよ。即刻、連れて帰るというのならば呼び起しても進ぜるが、さもなくば、明朝薬礼やくれいを持って改めて出直して来さッしゃい」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれがおめえ死んでしまえば、跡へ残るのはの小娘だ、なげえ間これ泊めて置いたから、病人の中へ宿賃の催促もされねえから、仕方なしに遠慮していたけんど、医者様の薬礼やくれいから宿賃や何かまで
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「道庵先生への薬礼やくれいはどうなさるつもりだえ」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
歳はゆかぬが十二になるおいさという娘が、親父おやじ身代しんだいを案じましてくよ/\と病気になりましたが、医者を呼びたいと思いましても、診察料も薬礼やくれいも有りませんから、い医者は来て呉れません。