薙伏なぎふ)” の例文
三方崩れかかった窪地の、どこが境というほどのくい一つあるのでなく、折朽おれくちた古卒都婆ふるそとばは、黍殻きびがら同然に薙伏なぎふして、薄暗いと白骨に紛れよう。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手には時ならぬ団扇うちわを携えて、はたはたと路傍の草花を薙伏なぎふせながら先に立って、そぞろ歩きをしています。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
三をばらり——ズン! 薙伏なぎふせたかと思うと、怨恨えんこん復讐ふくしゅうにきらめく一眼を源十郎の上に走らせ、長駆ちょうく、地を踏みきって、むらがる十手の中を縁へ向かって疾駆しっくきたった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と雲の峰の下に、膚脱はだぬぎ裸体はだかの膨れた胸、おおきな乳、ふとったしりを、若い奴が、むちを振って追廻す——爪立つまだつ、走る、の、白の、もも向脛むかはぎを、刎上はねあげ、薙伏なぎふせ、ひしぐばかりに狩立てる。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)