薔薇しょうび)” の例文
柳宗元りゅうそうげん韓退之かんたいしの文を読むごとに薔薇しょうびみずで手を清めたと云うくらいだから、吾輩の文に対してもせめて自腹じばらで雑誌を買って来て
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これぞ億万年ののちシャロンの薔薇しょうびを生じレバノンの常盤樹ときわぎを繁茂せしむる神の楽園とならんとはたれはかり知るを得しや。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
くれないなる、いろいろの旗天をおおひて大鳥の群れたる如き、旗の透間すきまの空青き、樹々きぎの葉のみどりなる、路を行く人の髪の黒き、かざしの白き、手絡てがらなる、帯の錦、そであや薔薇しょうび
凱旋祭 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
現代における思潮の淵源、天堂と食堂を兼備えて、薔薇しょうび薫じ星の輝く美的の会合、とあって、おしめとたすきを念頭に置かない催しであるから、留守では、芋が焦げて、小児こどもが泣く。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひだりへ折れて血塔の門に入る。今は昔し薔薇しょうびらんに目に余る多くの人を幽閉したのはこの塔である。草のごとく人をぎ、にわとりのごとく人をつぶし、乾鮭からさけのごとくしかばねを積んだのはこの塔である。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)