蔭膳かげぜん)” の例文
そのすべてが、秀吉を戸主と仰ぎ、秀吉を柱とたのみ、朝に蔭膳かげぜんそなえ、夕に武運を祈り、今生こんじょうの箇々小さなる命をまとめて
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊之吉という可愛い情人おとこがあって、写真まで取かわせてある、その写真は延喜棚えんぎだなにかざって顔を見ていぬときは、何事をおいても時分時になると屹度きっと蔭膳かげぜんをすえ
清姫様は蔭膳かげぜんえて待ちに待ちこがれておいでなさるが、日限ひぎりがたっても安珍殿の姿が見えない、気が気ではない、門前を通る熊野帰りの旅僧にたずねてみると、その人ならば
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
御意に入りましたら蔭膳かげぜん信濃しなのけて人知らぬ寒さを知られし都の御方おかた御土産おみやげにと心憎き愛嬌あいきょう言葉商買しょうばいつやとてなまめかしく売物にを添ゆる口のきゝぶりに利発あらわれ、世馴よなれて渋らず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
思えば、その方々へ、蔭膳かげぜんの礼もせずに、今日、一杯の酒とて、飲めた義理ではござりますまいに
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お父上様が阿波へおり遊ばしてから蔭膳かげぜんの日も早や十年でござります。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)