蓆張むしろば)” の例文
私の郷国きょうこく筑後の柳河やなかわは沖の端の水天宮の水祭みずまつりには、杉の葉と桜の造花で装飾され、すだれを巻き蓆張むしろばりの化粧部屋を取りつけた大きな舟舞台が
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
四条河原の非人ひにん小屋の間へ、小さな蓆張むしろばりのいおりを造りまして、そこに始終たった一人、わびしく住んでいたのでございます。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
肝腎の百蔵はいつのまにか、群衆の頭を踏み越えて、蓆張むしろばりの見世物小屋の丸太を伝って屋根から屋根を逃げて行きます。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
掘りかけている空堀からぼりの橋のたもとに、ふとみると、一軒のほったて小屋がある。四方は蓆張むしろばりで、たけを抑えに打ち、入口にのれんを掛けて、そこから一本の小旗が出ている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国技館の隣に回向院えこういんのあることは大抵誰でも知っているであろう。所謂いわゆる本場所の相撲もまだ国技館の出来ない前には回向院の境内に蓆張むしろばりの小屋をかけていたものである。
本所両国 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
国技館のとなりに回向院ゑかうゐんのあることは大抵たいてい誰でも知つてゐるであらう。所謂いはゆる本場所の相撲すまふまた国技館の出来ない前には回向院ゑかうゐん境内けいだい蓆張むしろばりの小屋をかけてゐたものである。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、四条河原の蓆張むしろばりの小屋ならば、毎晩きっとあの沙門が寝泊りする所ですから、随分こちらの思案次第で、二度とあの沙門が洛中らくちゅうへ出て来ないようにすることも出来そうなものだと思うのです。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)