蒼褪あおざめ)” の例文
Mはやや静まりかけた頭で学生の怪しい行動を考えていたところで、蒲団の端をさっとくられた。そこには学生の蒼褪あおざめきつった顔があった。
死体を喫う学生 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
これはあるいは私の幻覚であったかもしれぬが、その蒼褪あおざめた顔の凄さといったら、その当時始終しじゅう眼先めさきにちらついていて、仕方が無かったが、全く怖い目に会ったのであった。
青銅鬼 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
彼の顔は異様に蒼褪あおざめていた。目はキョロキョロとしてわりがなかった。非常な驚き、何とも云えぬ恐怖、そして底知れぬ不安の情が、まざまざと彼の顔に刻まれていた。
漸々ようよう二人が近寄ってつい通過とおりすぎる途端、私は思わずその煙草たばこを一服強く吸った拍子に、その火でその人の横顔を一寸ちょいと見ると驚いた、その蒼褪あおざめた顔といったら、到底とうてい人間の顔とは思われない
青銅鬼 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
星田はさっきよりも一層蒼褪あおざめて、空虚うつろな目をオドオドさせて、口籠くちごもった。
普通病気などで蒼褪あおざめるようなぶんではない、それはあだか緑青ろくしょうを塗ったとでもいおうか、まるで青銅からかねさびたような顔で、男ではあったが、頭髪かみのけが長く延びて、それが懶惰ものぐさそうに、むしゃくしゃと
青銅鬼 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)