葭簀張よしずば)” の例文
まず御定おきまりの活惚かっぽれの小屋が掛かる。するとデロレン祭文さいもんが出来る(これは浪花節なにわぶしの元です)。いずれも葭簀張よしずばりの小屋掛け。
東側の人道には、以前のようにいろいろの露店が並び、西側にはやはり、新年用の盆栽を並べた葭簀張よしずばりも出ている。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
妥女うねめはら小三こさんという三人姉妹の芝居があり、も一つ、鈴之助というのがあっただけで、これらは葭簀張よしずばりの小屋でございますから、まあ私どもが
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
お茶屋といつたところで、道端に建つた粗末な板屋根で、お茶の水の絶壁數丈の下から、足場を組み上げて張り出した、葭簀張よしずばりの凉しい別室が名物。
る日彼女は所在なさに、例年のように葭簀張よしずばりの日覆ひおおいの出来たテラスの下で白樺しらかばの椅子にかけながら、夕暮近い前栽せんざいの初夏の景色をながめていたが、ふと
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
海岸には、思い立ったように、葭簀張よしずばりのサンマアハウスだの、遊戯場だの、脱衣場だのが、どんどん建てられ、横文字の看板がかけられ、そして、シャワーの音がほとばしる——。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
大宮で休んだような、人のいない葭簀張よしずばりではない。茶を飲んで、まずい菓子麪包パンか何か食っている。季節は好く分からないが、目に映ずるものは暖い調子の色に飽いている。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
葭簀張よしずばりの休茶屋もある。千住へ行く乗合自動車は北側の堤防の二段になった下なる道を走って行く。道は時々低く堤を下って、用水の流に沿い、また農家の垣外を過ぎて旧道に合している。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それ喧嘩だというと、大勢がくずれて、私たちの跳ね出し店の手欄てすりを被り、店ぐるみ葭簀張よしずばりを打ち抜いて、どうと背後うしろまで崩れ込んで行ったものです。
それは隣りの店の余りで、池の上に跳ね出しになっているのです。前は手欄てすりで、後は葭簀張よしずばり、大きいのから高い方へ差し、何んでも一体に景気の沸き立って見えるように趣向をする。
葭簀張よしずばりの小屋など影も形もなくなりました。