萎微いび)” の例文
それはまさしく幻滅と萎微いびと沈滞と無目的と退嬰たいえいと窒息……等々にとざされた灰色の一時代であった。出口はどこにもない。
もしいて止めさせれば、丁度水分を失った植物か何かのように、先生の旺盛おうせいな活力も即座に萎微いびしてしまうのであろう。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
相伝が結局芸術の生命を萎微いびさせたのであるにかかわらず人々の注意はこの相伝を得ることに集まって、舞曲そのものの自由な考察には向かわなかった。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
その上、節約という声の感じが、家中の心理を、萎微いびさせたり、ゆがめさせたりしたのみだった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
油画の色には強き意味あり主張ありてく制作者の精神を示せり。これに反して、もし木板摺の眠気ねむげなる色彩中に制作者の精神ありとせば、そは全く専制時代の萎微いびしたる人心じんしんの反映のみ。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
喧騒けんそう、優雅の欠乏、あらゆる魅力と礼節と沈黙とを欠いた生活、生存を萎微いびさせるようなものはなんでも取上げる浅薄な悲観思想、他人を理解するよりも軽蔑けいべつする方をやすしとする傲慢ごうまんな非理知
え出でんとする芽は、その重みの下に押しつぶされる。人の心は息がつけなくなる。ただ首垂うなだれて、おのれの停滞した存在を見守るのほかはない。生命の力は萎微いびし、生きんとする意力は鈍ってくる。
油画の色には強き意味あり主張ありてく制作者の精神を示せり。これに反して、もし木板摺の眠気ねむげなる色彩中に制作者の精神ありとせば、そは全く専制時代の萎微いびしたる人心じんしんの反映のみ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)