荘子そうし)” の例文
旧字:莊子
すぐそこの何もない壁の下に、たった一つある頑丈な刀箱に頬杖をついて、絵に描いた荘子そうしのように、居眠りをしている男がある。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
荘子そうしに虚舟のたとえがある。今の予は何を言っても、文壇の地位を争うものでないから、誰も怒るものは無い。彼虚舟と同じである。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「ても恐ろしい眼力じゃよなあ。老子は生れながらにさとく、荘子そうしは三つにして人相を知ると聞きしが、かく弥平兵衛宗清と見られた上は……」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あの鯤という言葉は、支那の『荘子そうし』という本の一番始め、逍遥遊篇第一というところに出ている。その文句は〈北冥ほくめいに魚あり、その名を鯤となす。
その方共なぞからかって見たとて何の足しになろうぞ。荘子そうしと申す書にもある。興到って天地と興す、即ち王者の心也とな。道中半ばに駕籠をとめて釣を
はるばるこの国へ渡って来たのは、泥烏須デウスばかりではありません。孔子こうし孟子もうし荘子そうし、——そのほか支那からは哲人たちが、何人もこの国へ渡って来ました。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
世説せせつ左伝さでん戦国策せんごくさく老子ろうし荘子そうしと云うようなものもく講義を聞き、そのきは私ひとりの勉強、歴史は史記を始め前後漢書ぜんごかんしょ晋書しんしょ五代史ごだいし元明史略げんみんしりゃくと云うようなものも読み
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
支那の哲人荘子そうしは、かつて夢に胡蝶こちょうとなり、醒めて自ら怪しみ言った。夢の胡蝶が自分であるか、今の自分が自分であるかと。この一つの古い謎は、千古にわたってだれも解けない。
猫町:散文詩風な小説 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
徳用無類と雖も煩さくしつッこくボンヤリして気がきかず能く堪うべきに非ざるなり。児孫は老父を慰め団欒の楽しみをなすと雖障子はいつも穴だらけなり。荘子そうし既に塗抹詩書とまつししょたんをなせり。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
むかし、某君あるきみが、荘子そうしを召抱えたいと思って、使者をさしむけたところ、荘子は、その使いに答えていったという。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これに反して場外の名は京師けいしに騒いで、大中四年に宰相になった令狐綯も、温を引見して度々筵席に列せしめた。ある日席上で綯が一の故事を問うた。それは荘子そうしに出ている事であった。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)