荒壁あらかべ)” の例文
荒壁あらかべにハメ込んだ、小さい小窓、百姓家の万年床の寢部屋にはよくある圖ですが、高くて小さくて、明り取り以外には役に立ちさうもありません。
雲雀ひばりは鳴いて居たが、初めて田舎のあばら住居ずまいをする彼等は、大穴のあいた荒壁あらかべ、吹通しの床下ゆかした建具たてぐは不足し
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おまけに荒壁あらかべ一重のすぐ左隣は馬小屋で、右側は大家との共同便所だったので、不潔この上なしだった。
あの牛屋ぎゅうやに吊したような赤と白茶の片脚だけのが、内地は百姓屋の軒や周囲の荒壁あらかべにぐるりと掛け連らねた唐辛子、唐黍とうきび、大根の如く、いや、それを十層倍にしたぐらいの大きさのものが
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
あゝ、生れた村は藁葺わらぶき荒壁あらかべの沼の中の痩村だけれど、此儘帰れたら如何どんなに嬉しからう! たゞ、しかし、帰つたとて仕方がない。椋助むくすけだの馬鹿だのと人は言ふけれど、ミハイロはく心得てゐる。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
月のあたつた荒壁あらかべのうらで 鳴く
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
本堂はまだ荒壁あらかべの柱組み 碩
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
荒壁あらかべ小家こいへ一村ひとむら
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
荒壁あらかべに夏の朝日の照りてゐて漆の花の影もうつれり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)