茶棚ちゃだな)” の例文
それから紫檀したん茶棚ちゃだなが一つ二つ飾ってあったが、いずれもくるいの出そうななまなものばかりであった。しかし御米にはそんな区別はいっこう映らなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
室の正面には椅子いす三脚とネパール製の白布の長方形の厚い敷物があり、欧州風の黒檀こくたん茶棚ちゃだなの上にはネパール製の女神めがみの獅子に乗って居る白色の置物あり
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
すると、階段のすぐ取付きは六畳のよごれた座敷で、向うのすみに長火鉢だの茶棚ちゃだななどを置いてある。そして、その奥にはもう一間あって、そちらは八畳である。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
手炙てあぶり、卓、茶棚ちゃだななどくわきりされた凝った好みの道具がそこにぎっしり詰まっていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
洗い物をして来たお熊は、室の内に入りながら、「おや、もうお起きなすッたんですか。もすこしおッてらッしゃればいいのに」と、持ッて来た茶碗ちゃわん小皿などを茶棚ちゃだなへしまいかけた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
きんは田部の後姿に予感を受け取り、心のうちでふふんと軽蔑けいべつしてやる。この戦争ですべての人間の心の環境ががらりと変ったのだ。きんは、茶棚ちゃだなからヒロポンの粒を出して素早く飲んだ。
晩菊 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ふちの欠けた火桶ひおけに、古ぼけた茶棚ちゃだな枕屏風まくらびょうぶのほかはこれといって道具らしい物もみあたらないが、夜具や風呂敷包などきちんと隅に片付いているし、がまで編んだ敷畳もきれいに掃除がしてあり
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と自ら立って茶棚ちゃだなより菓子鉢を取りでつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)