芸妓屋げいしゃや)” の例文
旧字:藝妓屋
お桂さんの考慮かんがえでは、そうした……この手段を選んで、小按摩を芸妓屋げいしゃや町の演芸館。……仮装会の中心点へ送込もうとしたのである。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こうなっちゃ、すっかり白状してしまいますが、あの宮川通りの芸妓屋げいしゃや、和泉屋の福松という女のところへ、確かに三百両預けて参りました」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
芸妓屋げいしゃやが六七軒に、旅館以外の料亭りょうていと四五軒の待合がお出先で、在方ざいかた旦那衆だんなしゅうに土地の銀行家、病院の医員、商人、官庁筋の人たちが客であった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
どうせ芸妓屋げいしゃやの娘分になるくらいだから、生みの親は身分のあるものでないにきまっている。経済上の余裕がなければ、どう心配したって役には立つまい。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
元園町と接近した麹町四丁目には芸妓屋げいしゃやもあった。わたしが名を覚えているのは、玉吉、小浪などという芸妓で、小浪は死んだ。玉吉は吉原よしわらに巣を替えたとか聞いた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……それが死にましてからはな、川向うの芸妓屋げいしゃや道に、どんな三味線が聞えましても、お客様がたは、按摩の笛というものをお聞きになりますまいでござります。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三人のあいだに話がまとまり、倉持が銀子のペトロンと決まり、芸妓屋げいしゃやへ金を支払うと同時に、月々の小遣こづかいや時のものの費用を銀子が支給されることになり、彼女も息がつけた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その頃の元園町もとぞのちょうには料理屋も待合も貸席もあった。元園町と接近した麹町こうじまち四丁目の裏町には芸妓屋げいしゃやもあった。わたしが名を覚えているのは、玉吉たまきち小浪こなみなどという芸妓で、小浪は死んだ。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「飛んだ合せかがみだね、人死が出来てたまるものか。第一、芸妓屋げいしゃやの前へは、うっかり立てねえ。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お染は白地明石あかしあい子持縞こもちじまうすものを着ていたから、場所と云い、境遇も、年増の身で、小さな芸妓屋げいしゃやに丸抱えという、可哀あわれながれにしがらみを掛けた袖も、花に、もみじに
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただこのくらいなだったが——山の根に演芸館、花見座の旗を、今日はわけて、山鳥のごとく飜した、町の角の芸妓屋げいしゃやの前に、先刻の囃子屋台が、おおき虫籠むしかごのごとくに、紅白の幕のまま
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)