艀舟はしけ)” の例文
見廻り同心久良山くらやま三五郎、土地の御用聞常吉と伊太郎といふのが二人、それに平次と八五郎を加へて、橋の袂から艀舟はしけを出しました。
与力と御船手が立ちあいの上で、送り帳と人間を照しあわせて間違いがないとなると、艀舟はしけに乗せて品川沖の遠島船へまで送りとどける。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
と、お十夜孫兵衛、それにすがってはね上がると、次にそれへならって周馬も槍へつかまったが、呼吸が足らない、ドタンと艀舟はしけすべり落ちた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が海は相かわらず潮騒しおさいの音を立てて、岸辺に打ち寄せていた。艀舟はしけ一艘いっそう、波間に揺れていて、その上でさもねむたそうに小さな灯が一つ明滅していた。
黙って一語を発せぬ胸の内には言うに言われぬくるしみがあるらしい。男も悄然しょうぜんとして居る。人知れず力を入れて手を握った。直に艀舟はしけに乗った。女は身動きもせず立って居た。
句合の月 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
甲板給仕デッキ・スチュワアド船腹梯子ギャング・プランタに立って艀舟はしけを呼ぶ。声に応じて、幾つもの赤い土耳古トルコ帽がを操って殺倒する。上陸する女客たちは、大げさに怖がって、水夫の手で小舟へ助け下ろされる。
上の橋から船番所の艀舟はしけが出て、二丁ほど川下で水も呑まずに棹にかかった。
この時も、予は亦突然艀舟はしけをかにあげる人々の叫聲に驚かされた。
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
カリヤルが、艀舟はしけを出すといふ。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「あ、お役人樣方、どうしようか、途方に暮れてをりました。兎も角、艀舟はしけを出して、お醫者に人を走らせましたが」
赤い灯影ほかげうつ隙間すきまもないほど、川には艀舟はしけがこみ合っている。四国屋の五ツ戸前の蔵からは、まだドンドンと艀舟へ荷が吐かれている盛りだった。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はかり知られざるなにかの理由で船を見すてなければならなかったとしても、では、どんな方法で船を去って行ったのか。備えつけの二艘の艀舟はしけ苫屋根とまやねの両がわに縛りつけられたままになっている。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
艀舟はしけから本船に荷物を積み入るる人々の掛聲は殊に興が深い。
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
四国屋の船から凱歌をあげた数艘すうそう艀舟はしけは、暗い大川を斜めにさかのぼって、安治川屋敷へと櫓韻ろいんをそろえた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの晩茂野が藥取に行つたついでに覗いて見ると、城彈三郎が棧橋を渡つて海賊銀太の艀舟はしけに乘つた。話聲ですぐ歸ると解つたとしたら、茂野はどうするだらう」
橋場へ行くと、伊豆屋へは入らず、裏から廻って、かねて用意したらしい、一艘の艀舟はしけに潜りました。
誰も捨てる気じゃないけれど、宝石や時計を密輸入する時は、艀舟はしけの底に穴をあけておいてそこから水のはいらないようにゴムの袋を、舟底へぶら下げておくんだよ。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
橋場へ行くと、伊豆屋へは入らず、裏から廻つて、豫て用意したらしい、一艘の艀舟はしけに潜りました。
「あの晩茂野が薬取りに行ったついでに覗いてみると、城弾三郎が桟橋を渡って海賊銀太の艀舟はしけに乗った。話し声ですぐ帰ると解ったとしたら、茂野はどうするだろう」
その間に、平次が何やらさゝやくと心得た八五郎は、艀舟はしけを呼んで西兩國へ漕がせて行きます。