肩揚かたあげ)” の例文
大きなる潰島田つぶししまだに紫色の結綿ゆいわたかけ、まだ肩揚かたあげつけし浴衣ゆかた撫肩なぜかたほつそりとして小づくりなれば十四、五にも見えたり。
葡萄棚 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
されば傳吉おせんが物語りを聞て歎息たんそくし扨々世の中に不幸ふかうの者我一人にあらずまだ肩揚かたあげの娘が孝行四年こしなる父の大病を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
忠作は子供のくせに、このごろではもう前髪を落して、肩揚かたあげの取れた着物を着て、いっぱしの大人ぶっています。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
肩揚かたあげのある羽織はおりには、椿つばき模様もやうがついてゐた。かみはおたばこぼんにゆつてゐたやうにおもはれる。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
まだ十六の肩揚かたあげの取れないおぼこで、——お使ひ姫で、百壽園の看板かんばんになつてゐるのは、壽齋の娘で、十九になるしのぶといふ、これは大變ですよ、百まで生きたい亡者が押すな/\だ
門附の娘はわたくしが銀座の裏通りで折々見掛けた時分には、まだ肩揚かたあげをして三味線を持たず、左右の手に四竹よつだけを握っていた。髪は桃割ももわれに結い、黒えりをかけたたもとの長い着物に、赤い半襟。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何やら口の中で言つて、丁寧にお辭儀をしたのは、まだ肩揚かたあげのとれぬ十四五の小娘で、可愛らしさは申分ないにしても、身扮みなりの貧しさと共に、ひ弱さうで、痛々しいものさへ感じさせました。
銭形平次捕物控:180 罠 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)