聞知ききし)” の例文
あるいうまに、或は牛に、此般こんはんの者も多かるべし。しかれども予がかつ聞知ききしれるかれ干支かんししかく巳を重ねたるを奇異とせる記憶は、咄嗟とっさに浅次郎の名を呼起よびおこせり。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある時はわが大学に在りしことを聞知ききしりてか、学士がくし博士はかせなどいう人々三文さんもんあたいなしということしたりがおべんじぬ。さすがにことわりなきにもあらねど、これにてわれをきづつけんとおもうはそもまよいならずや。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
沢は、駕籠かごに乗つて蔵屋に宿つた病人らしい其と言ひ、鍵屋に此の思ひがけない都人みやこびとを見て、つい聞知ききしらずに居た、此の山には温泉いでゆなどあつて、それで逗留をして居るのであらう。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)