老朽ろうきゅう)” の例文
「そんなこと、ぜったいにないわ。万事都合なんかよくならない。すくなくも後藤先生のためにはよ。だって、老朽ろうきゅうなんて、失礼よ」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
こんな老朽ろうきゅうからだんでもいい時分じぶんだ、とそうおもうと、たちまちまたなんやらこころそここえがする、気遣きづかうな、ぬことはいとっているような。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
五十ぐらいの平田という老朽ろうきゅうと若い背広のせきというじゅん教員とが廊下の柱の所に立って、久しく何事をか語っていた。二人は時々こっちを見た。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
何でももう老朽ろうきゅうの英語の先生だそうで、どこでもやとってくれないんだって云いますから、大方暇つぶしに来るんでしょう。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
父親は岩見沢の警察の老朽ろうきゅうの巡査であったが、おすぎが二十三の年に脳溢血のういっけつで死んだ。母親はその二年前に死んでいた。
夕張の宿 (新字新仮名) / 小山清(著)
老朽ろうきゅうし、車体検査の度に喧しく云われていたが、修繕代が廻らぬため修繕を延し延しして居ったのを、阿部の好意に依って、タイヤもえ、傷んでいる所はすっかり修理して
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
御同姓ごどうせい河原かわはらと申す老朽ろうきゅうでございます」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
前の老朽ろうきゅう教師の低いはちのうなるような活気のない声にくらべては、たいへんな違いである。しかしその声はとかく早過ぎて生徒の耳にとまらぬところが多かった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「いろいろ、あってね。老朽ろうきゅうで来年はやめてもらう番になっていたところを、岬へいけば、三年ぐらいのびるからね。そういったら、よろこんで、承知しょうちしましたよ」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
あのとき、じぶんのあとへ赴任ふにんしていった老朽ろうきゅうの後藤先生と同じように、じぶんもまた人にあわれまれているとも知らず、いや、大石先生がそれを知らぬはずはなかった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)