老朽おいくち)” の例文
一年半ばかり居りますうちに角右衞門の女房が歿みまかりましたが、角右衞門も未だ老朽おいくちる年でもなく、殊に縁合えんあいになっているおかめさん、多助さんにも叔母さんに当るそうだから
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし天下の大盜と言はれたお狩場の四郎は此儘老朽おいくちる氣は毛頭ない。生きてゐるうちに、恩は恩、あだは讐で返し、惡事の帳尻を合せて置かなければ閻魔ゑんまの廳へ行つて申譯が相立たない。
受る事皆御父上の御高恩ごかうおんなればせめて此上の御恩報じには朝夕あさゆふ御側おそばに在て御介抱ごかいはう申上たし聊かも御不自由はさせ申間敷まじく何卒御止まり下さるゝ樣にと只管ひたすらいさめけれども父秀盛は更に聞入ず成程其方が申すこゝろざしはかたじけなけれども未だ/\我等とても全く老朽おいくちたるといふ身にもあらず諸國を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
御寝なるたって彼奴あいつが薬師堂に居た時、わしは奉公に這入ったが、彼奴も未だ老朽おいくちる年でもないから、肌寒いよって、この夜着の中へ這入って寝ろと云うので、よんどころなく這入って寝たが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しひて止むる時はもはや老朽おいくちたりと云にかへつて不孝になるべしと思ひ夫は仰せまでもなく何時いつにても御用の節は早速さつそくに參り候はん其儀は少しも御氣遣おきづかひあるべからずと申ければ五左衞門も安心なししから近日きんじつ出立におよばんと是よりたびの用意に及びあとの道場は半四郎にまかおき門弟中へも夫々に別れを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)