羞恥はぢ)” の例文
あとではむしいるまでも羞恥はぢ恐怖おそれとそれから勘次かんじはゞかることからつてきた抑制よくせいねんとがあわてゝもきらせるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『はあ。』と答へた時は若々しい血潮がにはかにお志保の頬に上つた。そのすこし羞恥はぢを含んだ色は一層ひとしほ容貌おもばせを娘らしくして見せた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かれは、まだ羞恥はぢ恐怖おそれとが全身ぜんしん支配しはいしてるおつぎをとらへてたゞ凝然ぢつうごかさないまでには幾度いくたびかへ苦心くしんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
多くの労働者が人中で感ずるやうな羞恥はぢ——そんな思を胸に浮べ乍ら、鷹匠たかしやう町の下宿の方へ帰つて行つた。町々の軒は秋雨あがりの後の夕日に輝いて、人々が濡れた道路に群つて居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)