繋綱もやい)” の例文
「それッ、とまをはねろ!」というと、一人の侍、繋綱もやいを取って舟を引寄せ、あとは各〻めいめい、嵐のように、狭いみよしへ躍り込んだ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
疲れて居るが十八人力もある山三郎、力に任して船のみよしを取りまして、ずる/\と砂原の処へ引揚げて、松の根形ねがたへすっぱりと繋綱もやいを取りまして
繋綱もやいを解きかけている宅助をほうり投げ、驚く啓之助を突きのけて、舟の中へ躍りこもうとした。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
続いて繋綱もやいを取る者、舟へ飛びのる者、しばらくドカドカ騒いでいる様子は、下屋敷から引っ立ててきたたわら一八郎とお鈴を、脇船わきぶねへ移すためにこの見張舟を呼んだものらしかった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、朽ち木の枝を手懸りに、一方の岸へ徐々じょじょと舟脚を寄せておりましたが、繋綱もやいを取りながら覆面の男が、真ッ暗な中でこう呟いたのが水の静寂しじまに響いて大きく聞こえました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、奥方の思し召であるぞと云って聞かせると、船頭の女房は、嬰児あかごと一緒に、泣いてしまった。をあわせて塀の内を拝みながら、繋綱もやいを解いて明石橋あかしばしの外へと、流れて行った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかりほうりこまれたのである。繋綱もやいが投げられる——渡り板がけられる。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
佐助は、繋綱もやいを解き、さおを抜いて、その棹で、浅瀬を突いた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
解きかけた繋綱もやいを放して、その顔がにっと笑うと
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
煙に顔をしかめながら、岸へ繋綱もやいを取っていた。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どこか、繋綱もやいをよそへ移しましょうか」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二艘の船を、繋綱もやいで抱きあわせて
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菊王は一つの杭に繋綱もやいをとった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
豊麻呂が、繋綱もやいを投げた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)