繁茂しげり)” の例文
街道には久しく村落がないが、西方には楊樹のやや暗い繁茂しげりがいたるところにかたまって、その間からちらちら白色褐色の民家が見える。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
かど、背戸の清きながれ、軒に高き二本柳ふたもとやなぎ、——その青柳あおやぎの葉の繁茂しげり——ここにたたずみ、あの背戸に団扇うちわを持った、その姿が思われます。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かど背戸せどきよながれのきたか二本柳ふたもとやなぎ、——青柳あをやぎ繁茂しげり——こゝにたゝずみ、あの背戸せど團扇うちはつた、姿すがたおもはれます。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
裏の酒井の墓塋はかの大樹の繁茂しげりが心地よき空翠みどりをその一室にみなぎらした。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
三枝、五枝、裏掻うらがいてその繁茂しげりが透くに連れて、段々、欄干の女の胸が出て、帯が出て、寝着ねまき姿が見えて、頬が見えて、鼻筋の通る、瞳が澄んで、眉が、はっきりとなる。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)