つむ)” の例文
「大君の辺にこそ死なめ」という意気で上代以来〔天皇〕を〔主君〕としてつむぎ営んで来た生活の原理であって
生命はとどこおるところなく流動する。創造の華が枯木にも咲くのである。藤原南家の郎女いらつめ藕糸はすいとつむいで織った曼陀羅まんだらから光明が泉のようにきあがると見られる暁が来る。
かうしてつむめた藕絲は、皆一纏めにして寺々に納入しようと言ふのである。寺には其々それ/″\技女ぎぢよが居て、其絲で、唐土様もろこしやうと言ふよりも、天竺風な織物を織るのだと言ふ評判であつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
阿繊は寡言むくちで怒るようなこともすくなかった。人と話をしてもただ微笑するばかりであった。昼夜つむいだりったりして休まなかった。それがために上の者も下の者も皆阿繊を可愛がった。
阿繊 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
父は最前もいった如く邸内の畠打をしていたが、その外綿繰りといって、実の交った綿を小さな器械を廻してそれを抜き、木綿糸をつむぐ下地をする賃仕事がある、それをセッセとしていた。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
越後えちごの七ふしぎの一つなる弘智法印こうちほういんの寺などでも、毎年四月八日の御衣おころもがえという日に、もとは海べ七浦の姥子うばこたち、おのおの一つかみずつのを持ちよって、一日のうちにつむり縫って
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
こうしてつむめた藕糸は、皆一纏ひとまとめにして、寺々に納めようと、言うのである。寺には、其々それそれ技女ぎじょが居て、其糸で、唐土様もろこしようと言うよりも、天竺風てんじくふうな織物に織りあげる、と言う評判であった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
女たちは、唯功徳くどくの為に絲をつむいでゐる。其でも、其が幾かせ、幾たまと言ふ風に貯つて来ると、言ひ知れぬ愛著を覚えて居た。だが其が実際どんな織物になることやら、其処までは考へないで居た。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)