総領そうりょう)” の例文
旧字:總領
小さなまげ鼈甲べっこうの耳こじりをちょこんとめて、手首に輪数珠わじゅずを掛けた五十格好のばばあ背後向うしろむきに坐ったのが、その総領そうりょうの娘である。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むかしは貴族きぞくの家の長子に生まれると福分ふくぶんを一人じめにすることができたが、今日の労働者ろうどうしゃの家庭では、総領そうりょうはいちばん重い責任せきにんをしょわされる。
むかし、三にんの男の子をったおかあさんがありました。総領そうりょう太郎たろうさん、二ばんめが次郎じろうさん、いちばんすえのごく小さいのが、三郎さぶろうさんです。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
聟入むこいりという形で婚儀は挙げたが、藤吉郎の一身は、浅野家を継ぐには事情がゆるさない。いずれ中村の母や家族も迎え取らねばならぬ総領そうりょうである。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
全部総領そうりょうの私のものなのだから、弟などには犬の子を養う資格が無いという意味だったのでしょうか、いまでも私には、はっきり理解が出来ないのですが、とにかくそう言われて
男女同権 (新字新仮名) / 太宰治(著)
御側役おそばやく平田喜太夫殿ひらたきだいふどの総領そうりょう多門たもんと申すものでございました。」
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あの子はあんたのようにばかではないわ」と総領そうりょうあねが小さい妹をいたわるようにのぞきこみながら答えた。
『ばか。総領そうりょうだぞ、この平太は、——おれのいいつけも、すこしはきけい。きいても、いいんだぞ』
「わしは、これから公用で、比企の庁へ行って、故郷くにへ帰るが、おまえは、良持どのの総領そうりょう、殊に帝系の家の御子なのだから、身を、大事にせねばいかんよ。いいかね」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの子は父さんをさがしているのだよ」と、子どもたちの中でいちばん総領そうりょうらしいのが言った。
いつのまにか隆々りゅうりゅうたる勢力と人望が集められたのは、何といっても、近年のことで、その要因は、官兵衛という総領そうりょう息子が、親まさりだったからといってさしつかえないようである。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)