しまり)” の例文
まなこは火のごとく血走りながら、厚い唇は泥のごとくしまりなくゆるんで、ニタニタと笑いながら、足許ふらふらと虚空をにらんで、夜具包み背負しょって、ト転倒ころがる女を踏跨ふんまた
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その気抜のした、そして譬へて云つて見ると、石や金でこしらへた彫像の目の様な目と、粗相なつやのない顔附を見たリツプは、しんの臓が胸の中で顛倒ひつくりかへつて、膝はしまりがなくなりました。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
青ぺらのつばむしり上げて、引傾ひきかたげていで見せたは、酒気さかけも有るか、赤ら顔のずんぐりした、目の細い、しかし眉の迫った、その癖、小児こどものようなしまりの無い口をした血気ざかりおのこである。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二三度旦那から手紙を寄越よこして、(奉公人ばかりじゃ、しまりが出来ない、病気がくなったら直ぐ来てくれ。)と頼むようにいって来ても、なんの、のッて、行かないもんだから、お聞きよ、まあ
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)