はぐ)” の例文
○「どうしてこう心配事が出来ない性分しょうぶんだろう。もっとも心配事があるとぐレコードをかけて直ぐはぐらかしちまうくせがあるんだけれど。」
現代若き女性気質集 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
高山の御用聞きに助勢を乞い、同行したが、途中ではぐれてしまい、今は一人でいる。猟師が獲物を腰にさげて通る。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
竹ノ子笠の怪は、廉子も聞いていたにちがいないが、帝のお耳には入れまいとするように、彼女は、中坪でのその人声をしいてはぐらしていた風だった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
から、昇も怪訝けげん顔色かおつきをして何か云おうとしたが、突然お政が、三日も物を云わずにいたように、たてつけて饒舌しゃべり懸けたので、ついはぐらされてその方を向く。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「あの時は従兄と一緒だったし、あの通り押し合いだったものだから、ついはぐれてしまって失敬した」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
二人が生活の爲の職業も見付からず、文學者としての自分の小さい權威も、何年かかんの世間との約束からだん/\はぐれて了つた事が義男にはいくら考へても情けなかつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
「小夜や、どうだい。あぶない、もう少しではぐれるところだった。京都じゃこんな事はないね」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから、高山の御用聞きの連中にはぐれたんだが、逢ったら俺のことを話してくれ。忘れると後でたたるぞ。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)