籾蔵もみぐら)” の例文
夜が明けると、邸内のお長屋から、槍やとう(革のしない)を持った侍たちが、ぞろぞろと籾蔵もみぐらの前の空地へ出て行った。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大阪の東町奉行所は城の京橋口きやうばしぐちの外、京橋どほり谷町たにまちとの角屋敷かどやしきで、天満橋てんまばし南詰みなみづめ東側にあつた。東は城、西は谷町の通である。南の島町通しままちどほりには街を隔てて籾蔵もみぐらがある。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
その姿を見つけた稲葉山城の兵たちも、味方とばかり思って、附近の薪倉まきぐらだの、籾蔵もみぐらなどの棟の下で、たむろしながら、朝の兵糧ひょうろうを喰って、雑談などしていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大庄屋の息子と、老百姓が二、三名と、それをきつけてる郷士ごうしの伜とが、こっそり籾蔵もみぐらから帰って行った。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
その一瞬、笠置山の闇から城内の籾蔵もみぐらの屋根のあたりへ、一羽のわしが、星をかすめて飛び降りた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
亭主の五兵衛は、裏の籾蔵もみぐらに入りこんで、いつもは、米をいたり、ぬかふるっているのであるが、今夜は、無尽講むじんこうがあるとかで、くらの二階で、宵から明りをともしていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこの竹むらの道から、ぴょいと小川を跳び越えて駆け出した秦野屋は、農家のとりを追いながら、向うの籾蔵もみぐらのうしろへ姿を消しましたが、また、白壁のかげから首を出して
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、事実はどこまでも事実で、瞬間しゅんかんののち、またもや同じような怪焔かいえんが、こんどは籾蔵もみぐらへおち、つづいて外廓そとぐるわ獣油じゅうゆ小屋など、よりによって危険なところへばかり落ちてくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若侍たちは、日吉をらっして、しゃ二、籾蔵もみぐらの前の空地へ引っぱって来た。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五兵衛はそう云って、籾蔵もみぐらのほうへ戻って行った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)