籐椅子といす)” の例文
代助は堪りかねてね起きた。跣足はだしで庭先へ飛び下りて冷たい露を存分に踏んだ。それから又縁側の籐椅子といすって、日の出を待っているうちに、うとうとした。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あづまやの籐椅子といすによりて二人なにをかたらむ。
古家のキヽキヽと鳴るにや籐椅子といす鳴るにや
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
僕はその時の限りかけた二階の縁に籐椅子といすを持ち出して、作が跣足はだしで庭先へ水を打つ音を聞いていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さま/″\の籐椅子といすあり皆掛けて見し
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
とく水色の籐椅子といすに酒をそそぎてよ
交歓記誌 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
門野の着ている白地の浴衣ゆかただけがぼんやり代助の眼にった。夜の明りは二人の顔を照らすには余り不充分であった。代助は掛けている籐椅子といす肱掛ひじかけを両手で握った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
タービンの響き籐椅子といすに伝はり来
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
しばらくそのあとを眺めていたが、やがてまた籐椅子といすの上に腰をおろした。例の英吉利イギリスの男が、今日は犬を椅子いすの足に鎖で縛りつけて、長いすねをその上に延ばして書物を読んでいる。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大景を座断してをる籐椅子といすかな
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そうして自分は真白なターバンをぐるぐる頭へ巻きつけて、広いヴェランダにえつけてある籐椅子といすの上に寝そべりながら、強いかおりのハヴァナをぷかりぷかりと鷹揚おうように吹かす気でいた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
電車の音のする所で月をるのは何だかおかしい気がすると、この間から海辺に馴染なずんだ千代子が評した。僕は先刻さっき籐椅子といすの上に腰をおろして団扇うちわを使っていた。さくが下から二度ばかり上って来た。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼はそこにある籐椅子といすの上に寝ていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
兄は籐椅子といすの上からお貞さんを見て
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)