箱膳はこぜん)” の例文
お兼 (登場。箱膳はこぜんの上に徳利を載せて左衛門の前に置く)お待ち遠さま。ひもじかったでしょう。さあおあがりなさい。(徳利を持つ)
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
亭主は食べおわった茶碗に湯を注ぎ、それを汁椀しるわんにあけて飲み尽し、やがて箱膳はこぜんの中から布巾ふきんを取出して、茶碗もはしも自分でいて納めた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
りのげた箱膳はこぜんに、沢庵たくあん四きれ、汁一わん、野菜の煮しめが一皿ついて、あたりに人はなしといえども、それをあぐらで食うわけにはいかない。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それらは古い箱膳はこぜんや、椀や、はし、おはち、下駄、足駄、傘、ゴム底の足袋、古いゴム長靴、ゴム引きの雨外套あまがいとうに、ゴム引きの雨天用帽子、などといった類であるが、その中には三
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
老主人はこれもいつもの通り長火鉢ながひばちの側に箱膳はこぜんを据ゑて小量な晩酌ばんしやくを始めてゐた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
やがて隠居所からかよって来るおまんをはじめ、一日の小屋仕事を終わった下男の佐吉までがめいめいの箱膳はこぜんを前に控えると、あちらからもこちらからも味噌汁みそしるわんなぞを給仕するお徳の方へ差し出す。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)