箇程かほど)” の例文
ふ可くんば、宮はおのれが美しさの幾何いかばかり値するかを当然に知れるなり。彼の美しさを以てしてわづか箇程かほどの資産をぎ、類多き学士風情ふぜいを夫に有たんは、決して彼が所望のぞみの絶頂にはあらざりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
少くとも歌につきて箇程かほどの卓見を有せる元義が一人の同感者を持たざりしを思ひ、その境遇の箇程に不幸なりしを思ひ、その不平の如何に大なりしやを思ひ、その不平を漏らす所なきを思ひ
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
箇程かほどまでに迷わせたるお辰め、おのれも浮世の潮に漂う浮萍うきくさのようなさだめなき女と知らで天上の菩薩ぼさつと誤り、勿体もったいなき光輪ごこうまでつけたる事口惜し、何処いずこ業平なりひらなり癩病なりんぼなり、勝手に縁組、勝手にたのしめ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そも/\微〻たる旧基を振ひて箇程かほどの大寺を成せるは誰ぞ。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)