いらえ)” の例文
しかし島君はこう訊かれても早速にいらえをしようともしない。ふと彼女は立ち上がった。フラフラと縁先へ歩いて行き、かぐわしい初夏の前栽せんざいへつとその眼を走らせたが
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「は、」と、いらえをし、大人しやかな小間使は、今座に直った勇美子と対向さしむかいに、紅革べにかわ蒲団ふとんを直して
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いか、それでも可いか。これと、肩を押えてゆすぶれば、打戦うちわななくのみいらえは無し。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いきおいよくかまちに踏懸け呼びたるに、いらえはなく、きぬ気勢けはいして、白き手をつき、肩のあたり、衣紋えもんのあたり、のあたり、衝立ついたての蔭に、つと立ちて、烏羽玉うばたまの髪のひまに、微笑ほほえみむかえし摩耶が顔。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と呼び立つれど、老婆は更にいらえせねば
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)