筋骨すじぼね)” の例文
筋骨すじぼね暴馬あれうまから利足りそくを取ッているあんばい、どうしても時世に恰好かッこうの人物、自然淘汰とうたの網の目をば第一に脱けて生き残る逸物いちもつと見えた。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
此方こなた差覗さしのぞくような気がして、筋骨すじぼねも、ひしひしとしめつけられるばかり身に染みた、女の事が……こうした人懐しさにいやまさる。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その間の長さと申しましたら、橋の下の私のおいには、体中の筋骨すじぼねが妙にむずがゆくなったくらい、待ち遠しかったそうでございます。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
眉を造った、白粉おしろいの濃い、金縁の眼鏡にまぶたしわをかくした顔こそ若けれ、あらわに見ゆる筋骨すじぼねは数四十であるのに、彼をいだくものあらば正にその者の手の下なるべき、左のそびらを肩へかけて
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこへ、はらはらとかかる白絽しろろたもとに、魂を結びつけられたか、と思うと、筋骨すじぼねのこんがらかって、さばきのつかないほど、み立てられた身体からだが、自然に歩行あるく。……足はどこを踏んだか覚えなし。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(この時人々の立かかるを掻払かいはらう)六根清浄ろっこんしょうじょう、澄むらく、きよむらく、清らかに、神に仕うる身なればこそ、このよこしまを手にも取るわ。御身おみたちが悪く近づくと、見たばかりでも筋骨すじぼねを悩みわずらうぞよ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)